番外編

第三回 ハメ手中飛車

 

 今回の定跡キソの超基礎は、趣を変えてハメ手を扱ってみたいと思います。ハメ手の中でも、炸裂した時の爽快感が強く、なおかつハメやすいもの(実際に管理人が実戦の中でハメた経験のある戦法)を選びました。割と有名なハメ手ですので、ご存知の方も多いかと思いますが。ちなみに、ゴキゲン中飛車(5五歩型中飛車)を嫌う一部の居飛車党は、▲5六歩に△5四歩を指してきます。そう言った意味で、1局目にゴキゲン中飛車で快勝した直後、同じ相手にこのハメ手を使うと、より効果的かもしれません。対象は2級~5級くらいだと思います。有段者には効きません。

 初手から、▲7六歩、△8四歩、▲5六歩、△5四歩、▲5八飛、△6二銀、▲5五歩、△同歩、▲同飛、△4二玉、▲7八金、△3二玉、▲4八玉まで。居飛車が、△5四歩をついてこない場合、このハメ手は成立しません。奇襲戦法に近いので、毎回コンスタントに使えるわけではない点はご了承ください。その代わり、条件が揃った場合は、必勝の戦法となります。

 図は、▲4八玉に、△3四歩と飛車とりに角道をあけた局面です。別に、すぐここで△3四歩でなくてもいいのですが、まあ気分的に5五に飛車がいたら、3四歩と突いてみたくなるのが対局者心理ではないでしょうか。後手がいつまでも△3四歩とついてこず、じっくりと駒組をしてこられても、このハメ手は成立しません。しかし、例え相手がハマるように動いてこなくとも、先手としては通常の中飛車戦法を指せばいいだけですので問題ありません。

 △3四歩に対して、先手は▲5四飛と厭味たらしく逃げておきます。無論、後手が何もしてこなければ、▲3四の歩をかすめとる目的です。ここで、何故このハメ手の対象者を2~5級に設定しているかがポイントになってきます。相手があまりにも初心者だと、このハメ手にはひっかかってくれません。ハメる相手は、程よく強いくらいがベストです。その理由は・・・。

 ▲5四飛以下、△8八角成、▲同銀、△4五角。相手が初心者ではなく、少なくとも5級以上あれば、こう指してくるものでしょう。後手からすれば、3四の歩を守りながら(▲3四飛を防ぎながら)、5四の飛車とりになっており、なおかつ、2七に角がなれるのですから。反対に言うと、このいかにもおいしそうな筋にすら気づいてくれない相手では、ハメようがないのですが・・・。

 △4五角以下、▲5五飛、△2七角成に、▲2五飛車!この形で後手に△4五角をさえ打たせれば、後手はもう完全にはまっています。▲2五飛の馬とりに対しては、後手5四に馬を引く1手ですが・・・・。

 ▲2五飛以下。△5四馬に、▲2四歩!!!この、▲2四歩で一丁あがりです。もう、先手の勝ちはゆるぎません。この▲2四歩を実現させるために、わざと2七の歩を切らせた(取らせた)ことに気づかれるでしょうか。もう少し詳しく言うと、後手4五角の成る場所を2七に限定するために、最初に7八金と無意味に上がって6七の地点をカバーしているのです。

 ▲2四歩に対し、素直に△同歩と取ると、▲2四同飛、△2三歩、▲3四飛(上図)で、王手馬とりが決まる寸法です。

△2三歩ではなく、△4四馬(上図)と受けても、以下▲2三角、△3三玉、▲4一                        角成、△2四玉、▲3一馬(下図)これは誰がどうみても先手必勝でしょう。

 

 従って、図の▲2四歩に対して後手は△同歩とは取らず、2二銀と受けてきます。△2二銀以下、▲2三歩成、△同銀、▲2四歩、△1四銀、▲2三角!

 この角を、後手が取れば▲2三歩成で先手よし。△4二玉と逃げても、▲1四角成と角を切ってから、2三にと金を作って先手よしとなります。

 

 このハメ手のポイントは

1、後手が5四歩と突いてくること。

2、後手がじっくり駒組しようとせず、早い段階で△3四歩と飛車とり(角道をあける手)にきてくれること。

3、後手が4五角というおいしい筋(飛車とり角成りの両狙いの筋)に気づくこと。

 この3つの条件が揃えば成立するハメ手です。この形で、後手が4五角を打ってきたら「もう将棋は終わった」と思っていただいて結構です。経験上10回試して1~2回はまればいいほうですが、はまった時の快感は病み付きになります。興味があったら試してみてください。

 

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